目次
胡蝶蘭のことならHitoHana(ひとはな)

胡蝶蘭の原種の特徴

181013o23

ファレノプシス・ギガンテア(Phal.gigantea)
「象耳蘭」の異名がある、胡蝶蘭の中で最大の葉を持つ種です。
薄緑色の葉は大きくなると1mにも達するとか。
長い花茎を下垂させ、黄白色の地に紫褐色の模様が入った花をいっぱい咲かせます。

出典: http://www.pref.kyoto.jp
お祝いのお花として定番の胡蝶蘭。いま私たちがよく目にするこの胡蝶蘭のほとんどが、品種改良によって生み出された交配種であることをご存知ですか?
交配の親になった胡蝶蘭の原種は、胡蝶蘭の上品で繊細なイメージを覆すような、野生ならではの魅力があります。そこで今回は胡蝶蘭の原種に焦点を当てて、その意外な生態と野趣あふれる姿に迫ります。

胡蝶蘭の学名は「蛾のような」

胡蝶蘭の原種について触れる前に、まずは名前についてお話しします。

日本では「胡蝶蘭」と呼ばれていますが、これは和名で、世界共通の学名は「ファレノプシス(Phalaenopsis)」といいます。ギリシャ語の「Phalaina(=蛾)」と、「opsis(=似る)」の2語を合成して名付けられました。英名では「モス・オーキッド」といい、訳すとこれも、蛾のような蘭、という意味です。
蛾、と言われても、上品な胡蝶蘭のイメージとは似ても似つかず、今ひとつピンときませんよね。
それもそのはずで、イギリスから日本に初めて胡蝶蘭が輸入されてきたのは明治時代。その頃イギリスではすでに鑑賞用として胡蝶蘭の交配が進められていて、日本に入ってきたときは、今日私たちが目にするものと同じような美しく大きな花びらでした。ですから日本人は、その花姿を蝶に見立てて「胡蝶蘭」と名付けたのです。

それでは、「蛾のような蘭」と名付けられた胡蝶蘭の原種は、一体どんな花なのでしょうか?

胡蝶蘭の原種は木の上に住む

Ff7b73b75d78bb92a946dbc43d5e8677

胡蝶蘭は、木に張り付く着生植物。高い所が好きです。

出典: https://www.flickr.com
胡蝶蘭の原種は単軸性の着生(ちゃくせい)植物で、樹木の幹や枝の肌に根を這わせるようにして張り付いて生育しています。一部は岩に着生するものもあります。
高温多湿の密林で、直射日光が遮られるような背の高い樹木の幹に着生し、風通しのよい場所を好みます。根や葉は養水分を蓄え、乾燥に耐えられる構造になっています。

胡蝶蘭の原種の生まれ故郷

胡蝶蘭の原種は、東南アジアを中心にインド、フィリピン、台湾、中国南部、オーストラリア北部にまで広く分布します。
自生地のほとんどは熱帯雨林で湿度の高い場所ですが、中には、寒冷期に0℃以下にもなる高地や、熱帯季節林と呼ばれる乾季のある地帯で生息している種類もあります。
原種はじつに多様な気候条件に順応しながら生息していることがうかがえます。

胡蝶蘭の原種の種類と魅力

Img 1

ファレノプシス・アンボイネンシス(Phal. amboinensis)
黄色地に茶色い横縞。野生種ならではの色合いです。

出典: http://blogs.yahoo.co.jp
胡蝶蘭の原種の特徴が分かったところで、ふと疑問が浮かびます。胡蝶蘭は温度や湿度に繊細な植物のはずなのに、なぜ原種は様々な地域で生息できるのでしょう?その答えは、原種の様々な姿形にありました。

多種多様な姿形の原種

胡蝶蘭の原種は50種類ほどあると言われています。その多くは絶滅危惧種とされ、国際取引はワシントン条約の対象として厳しく規制されています。
それぞれの姿形は、地域によって様々です。大きさは、葉の長さが10cmに満たない小型種から、1mに達する大型種まであります。花色は、白、ピンク、黄色、緑色のほか、土留め色といった野生種ならではの色彩もあります。花びらの大きさはいずれも小さめです。花形は園芸種でおなじみの蝶が舞うような丸っこい形もあれば星形もありますし、ストライプやまだら模様があったりと、実にバラエティーに富んでいます。花を咲かせる時期もまちまちで、数輪を次々と咲かせたり、数十輪をほぼ同時に開花させたりします。

様々な姿形をしている理由

では、同じ胡蝶蘭なのにどうしてこんなにも姿形が違うのでしょうか?
それは、それぞれの種がそれぞれの環境に適応しようと進化してきた結果です。比較的乾燥する地域では、葉をより大きく根をより太くして養水分を溜め込み、寒冷期のある地域では、葉を落として休眠します。

また、胡蝶蘭をはじめとするラン科の植物は、他の生き物の助けを借りて生きています。種子から発芽する時は、ラン菌(カビの一種)と共生しなければ発芽することができませんし、花が咲いた時は、昆虫や鳥などの動物に花粉を運んでもらい受粉します。次の世代に子孫を残すためには、菌や動物との共生が欠かせません。

共生するための進化

Be38a9bfb6bfacdcf7a0cfa89531f030

いっぺんに花を咲かせて、動物が花粉を運んでくれるのを待っています。

出典: http://podokonnik.temadnya.com
花粉を運んでくれる動物は、それぞれの種によって異なります。言い方を変えると、特定の動物に花粉を運んでもらうために、胡蝶蘭それぞれの種が姿形を変えたのです。

例えば、リップ(花の中央部分)の位置や大きさは種によって異なります。これは、特定の動物の大きさに合わせて形状を変え、とどまりやすくさせているのだそうです。ちなみにリップの色は原種の場合は黄色が多いのですが、黄色は動物を誘因しやすい色だと言われています。

また花粉は、数万から数十万個単位で「花粉塊」を形成していて、花粉の大きさがそれぞれ異なります。これも動物の大きさに合わせて、体にくっつけやすくしているという説があります。

さらには花を咲かせるタイミングすらも動物の行動パターンに合わせています。数輪を長期間咲かせたり、数十輪を同時に咲かせたりするのも、受粉確率を高めるためなのだそうです。野生種ならではの驚くべき進化ですね。

胡蝶蘭の原種の魅力はたくましい自然美

このように、胡蝶蘭の原種は様々な気象条件下に適応し、子孫を残すために他の動物の力を借りてしたたかに進化してきました。たくましい適応力が多様な特徴となって表れているのですね。
胡蝶蘭の原種の魅力は、貪欲に生きるために自ら形成した美しさです。野趣あふれる自然美に人間が心惹かれたのもうなずけますね。

胡蝶蘭の原種は購入できるのか?

D7a5a7f4c8b15010755d4fb3257eeb8d

各地で開催される洋ラン展では即売会もあるので、珍しい原種が手に入るかもしれません。

出典: https://kacco.kahoku.co.jp
ここまで見てくると、たくましさと美しさを兼ね備えた胡蝶蘭の原種を、見てみたい育ててみたいと思う方もいらっしゃることと思います。
過去の世界らん展では、ある原種の初公開を目玉にしていた例もあり、こうした展覧会などでないと、原種を実際に見るチャンスは少ないかもしれません。

しかし最近では、ネットで購入できる原種もお目見えしてきました。これは繁殖・栽培の技術が日々進んでいる成果と言えます。
先ほど原種はほとんどが絶命危惧種だと説明しましたが、条件をクリアすれば国際取引が可能です。条件というのは、現地業者が栽培や繁殖をし、安定的に繁殖できる状態であることが証明されることです。
購入できる原種は、まだまだ流通量が少なく価格も高めです。価格は一般的に、苗の高さが15~20cmで3号鉢(直径9cm)の場合、2000~5000円ほどのようです。原種を好んで栽培する園芸家も増えているので、人気の高まりとともに私たちが購入できる種類が増えていくかもしれませんね。
以下、流通し始めた主な原種を2つご紹介しますので、参考になさってみてください。
  • ファレノプシス・シレルアナ(Phal. schilleriana)

フィリピンや台湾原産で、淡いピンク色の花をたくさん咲かせます。ピンク色や赤色の交配親としても有名です。
花は冬~初夏に不定期に咲きます。
800px phalaenopsis schilleriana orchi 010

美しいピンク色に、唇弁(リップ)には赤褐色の斑が入ります。

出典: https://ja.wikipedia.org
  • ファレノプシス・ビオラケア(Phal.violacea)

原産地で名称が変わります。スマトラ島原産はビオラケア。ビオラケアは「スミレ色の」を意味します。
ボルネオ島原産はファレノプシス・ベリーナ(Phal.bellina)というそうです。
花弁の分厚い星型の花を数輪つけます。フチは黄緑で中心部分が赤紫という花色と、香りがあるのが特徴です。
0000 0024a

最近出回っているものは選別種や交雑種が増えてきて、ベリーナとビオラケラの判別は難しくなっているようです。

出典: http://www.yasashi.info

胡蝶蘭の原種を育てるコツ

これは胡蝶蘭の原種に限った話ではありませんが、原種だから丈夫で育てやすいわけではありません。どの植物も、生育した環境に近ければ元気に育つのが原理です。
胡蝶蘭の原種を手に入れたら、まずはどんな地域や環境で育っているのかを知りましょう。そしてその環境に近づけてあげるのが、胡蝶蘭の原種を上手に育てるコツです。
冬に休眠して春に咲いたり、夏にたくさんのお花を一度に咲かせたりと、種類によって生育サイクルが異なりますのでチェックしてみてくださいね。季節感をより楽しめるのも原種のいいところ。それぞれの個性を楽しみましょう。

交配の元になっている原種

1024px phalaenopsis stuartiana   flickr 003

ファレノプシス・スチュアーティアナ(Phal. stuartiana)
白色あるいはクリーム色の花びらに赤褐色の斑点が入るのが特徴です。
個性のある原種をかけ合わせることで、さまざまな特徴の園芸種が生み出されます。

出典: https://en.wikipedia.org
それでは最後に、いま私たちがよく目にする園芸種の、交配の元になっている主な原種をご紹介します。
  • ファレノプシス・アマビリス(Phal. amabilis)。

園芸種の交配母種になっている白色種です。アマビリスとは「愛らしい」を意味します。
00000000064 001

花茎がアーチ上に伸びて、 10~20輪の花をいっせいに咲かせます。

出典: https://www.shuminoengei.jp
  • ファレノプシス・アフロディテ(Phal. aphrodite)

アマビリスと並ぶ白花の代表品種。花茎の先に花径7~8センチの白い花をたくさんつけます。
 e3 83 95 e3 82 a1 e3 83 ac e3 83 8e e3 83 97 e3 82 b7 e3 82 b9 e3 83 bb e3 82 a2 e3 83 95 e3 83 ad e3 83 87 e3 82 a3 e3 83 86091219a l

胡蝶蘭の園芸種で白色は定番ですが、原種の中では珍しいです。

出典: http://shokubutsu-zukan.net

学名の種小名はギリシャ神話の愛と美と豊穣の女神アフロディテから。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3
  • ファレノプシス・エクエストリス(Phal.equestris)

和名を姫胡蝶蘭(ヒメコチョウラン)といいます。小形種の重要な交配親です。
A2207 picture zoom

花びらから唇弁(リップ)にかけて、ピンク色のグラデーションが綺麗です。

出典: https://minhana.net
  • ドリティス・プルケリマ(Doritis pulcherima)

赤みを帯びた小輪の花を多くつけます。胡蝶蘭との交配親として重用されています。
Doritis pulcherrima f coerulea toapel

鮮やかな花色や小型多花という特徴が、交配に役立てられています。

出典: https://sv.wikipedia.org

まとめ

いかがでしたでしょうか。
胡蝶蘭の原種には、多様な特徴があること、その理由は様々な環境に適応しようと自らを進化させた結果だということがお分かりいただけましたでしょうか。
また胡蝶蘭の原種の中には、ネットで購入できる種類も出始めました。これを機会に栽培してみるのも楽しそうですね。「この花はどんな環境下で生きてきたのだろう?」まずは生育環境を知ることが上手に育てるコツですよ。
あなたがプレゼントで目にする園芸種も、原種が親となって交配され、たくさんの手間と時間が費やされて誕生した品種です。
時には胡蝶蘭のルーツに思いを馳せながら、胡蝶蘭の美しい花姿を楽しんでいただけたら幸いです。

関連するまとめ